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    かつて競技プログラマー兼学生起業家としてキャリアをスタートした髙橋直大(chokudai)に、自身の起業の経緯や想い、競技プログラマーならではのキャリアプランの描き方、就職活動に際しての心がまえやポイントなどを語ってもらった。

在学中に起業して思い描いたキャリアプラン

まず、髙橋社長ご自身と競技プログラミングとの出会いから教えてもらえますか。

 2006年、高校時代にさかのぼります。当時、私はひじのケガで野球部を引退し、友だちの多いパーソナルコンピュータ研究部に入り浸っていました。そして、そこでSuperConという3人チームで臨む競技プログラミングコンテストに参加することになったんです。その頃の私のプログラミング経験はというと、正直、学校の授業で習ったことがある程度でした。が、チームメイトに恵まれたこともあって勝ち進んで全国で6位に入賞、約2カ月間の予選の間に実践を通じてスキルアップできたこともうれしく、これを機に本格的に競技プログラマーとしての活動に取り組むようになりました。振り返ってみれば、当時はまだ競技人口がかなり少なかったため、スキルアップといっても知れたものでしたが、今の自分があるのはこのときに自信と意欲を持つことができたおかげだと思っています。

大学在学中にAtCoderを立ち上げたそうですね。
ITエンジニアとして就職する道ではなく、自ら起業する道を選んだ理由をお聞かせください。

 大学院生(修士1年生)のときにAtCoderを立ち上げた際には、ただ競技プログラミングの楽しさを広めたい、一緒に楽しむ仲間を増やしたいという一心でした。でもその後のキャリアプランについては、卒業後にITエンジニアとして企業に就職するか、このままAtCoderを続けるか、でかなり悩みましたね。アルゴリズムが得意で大好きな私にとってITエンジニアは天職にも思えましたが、「自分は何をしたいか」と「自分に何ができるか」を軸に考えた結果、自らITエンジニアとして活躍しながらも、経営者の立場で幅広い人財を取りまとめ、さまざまなプロジェクトを立ち上げたり動かしたりする道を模索しよう、と決めたんです。


競技プログラマーとしての自分の強みや特性を知ろう

近年、先端IT人財の不足が深刻化し、その供給の場として競技プログラミングコンテストにより一層注目が集まっています。「競技プログラマーはIT企業への就職に有利」という声もありますが、髙橋社長の実感としてはいかがですか。

 競技プログラマーがここ数年、毎年のように倍増し競技プログラミングの知名度が上がったことで、たしかに以前より採用においてAtCoderのレーティングを重視する企業が増えています。それで「競技プログラミングのレーティングが高ければ、有名な企業から声がかかる、楽に就職できる」と安易に考える人が多くなってしまっているのも事実です。
 しかし、競技プログラミングはあくまでも〝ゲーム〟の一種です。与えられた課題を解き、その点数に応じて順位付けするという意味では学校のテストにも似ています。一方で企業活動では、会社の利益を上げるという大目標に向けていくつもの小目標や課題が設定されますし、それを誰にどう割り振るか、どの課題にどんなタイミングでどう取り組むべきなのか、といったことが重要になります。そして、そのなかで自分がどのような価値を生み出せるかを常に考えなければなりませんし、仲間たちや自分とは異なる立場のメンバーとのコミュニケーションや連携も必要になります。つまり、「レーティングが高い」だけでは企業でどう活躍できるかを測ることはできないのです。だからこそ、就職活動に臨む競技プログラマーには、競技プログラミングで培った土台の上で「自分は何をしたいか」「自分に何ができるか」をしっかりと考え、伝えてほしいと思います。

このサイトは、まさにそのためのプラットフォームというわけですね。

 その通りです。競技プログラマーが活躍している事例と、競技プログラマーを求めている企業の事例を数多く掲載しているので、就活に取り組む競技プログラマーたちは自身のスキルをどこでどう生かせるのか、どんな仕事に向いているのか、不向きなのか、自分の望む働き方をするためには何が足りないのか、といったことを自分で考え、イメージできるようになります。
 たとえばITコンサルタント企業では、お客さまの課題を解消するだけでなく、「何が困っているのか」をヒアリングし、課題設定を行うところから仕事が始まりますが、そうした仕事に向いている人もいれば、そうでない人もいるはずです。まずはそういった自身の競技プログラマーとしての強みを正しく認識した上で「どんな環境や待遇で働きたいか」を見定めてほしいと思います。
 競技プログラマーであることは、間違いなくITビジネスに携わる上で大きなメリットになりますが、レーティングを上げるだけではその真価を発揮することはできません。当サイトのコンテンツを自己分析に最大限に役立てて、ぜひとも競技プログラマーの強みを生かせる人財になってほしいと思います。



髙橋 直大 Naohiro TAKAHASHI
2012年 慶應義塾大学 環境情報学部卒業 2014年 慶應義塾大学院 政策メディア研究科卒業 2008年に、Microsoftが主催するプログラミングコンテスト「Imagine Cup」で世界3位を獲得。その後、ICFP Contestの4度の優勝、TopCoder Openの2度の準優勝など、プログラミングコンテストにおいて多くの成績を残す。 2012年に、日本でプログラミングコンテストを開催するサービス「AtCoder」を立ち上げ起業。現在では、毎週 5000人以上が参加するコンテストに成長している。